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有機肥料のお話

有機肥料に、化学肥料、はてまた無肥料栽培...

このように肥料だけとってみても、農産物の生産がさまざまな肥料に関する言葉で修飾されています。


ところで有機肥料って何でしょうか?


化学の世界で有機物というのは、炭素を含む物質の総称です。


肥料の世界での有機は、少し意味が違っていて「有機物を原材料とし、製造に際し人が直接、化学的な処理を施していない肥料」位が、私は最も適当ではないかと思います。
これを定義1としましょう。

JASによる有機栽培では、化学的な処理が施されていない肥料が使用可能であることから、有機物、無機物の関係無しに、JAS有機栽培で使える肥料を有機肥料としようという考え方もあります。
これを定義2としましょう。


どちらの考え方も一見、立派に見えますが、実は抜け穴があります。


定義2のJAS有機栽培では、一部化学肥料の使用を認めています。
ただし、ごく一部が認められているだけであって、何でも使える訳ではありません。


具体的に何が認められているかというと、ミネラル分(微量要素)を補給するための肥料は、化学肥料の使用が認められています。
鉄、銅、亜鉛、ホウ素、マンガンなどは微量ですが、植物の生育にとって必要なものです。


本来こういったものを含む肥料も、化学的な処理が施されていないものが選ばれるべきです。
ところが、これらを含んだ肥料で人為的な化学処理を経ていないものはありません。
ですから、しょうがない、例外的に認めようということです。


これらミネラル分が不足すると、作物の生育が思うようにならなかったり、害虫が付きやすくなったり病気になりやすくなったりと、良い事はありません。
そこで、私の周囲の有機農家でも、こういった微量要素を含んだ化学肥料を必要に応じて使うところが増えてきました。
作物の健全な生育を保ち、高品質な農産物の生産を行うにはどうしてもミネラルは欠かせないのです。
これを読んで、例えあなたがおつきあいされている有機農家が同様な事をしていても、その行為を無条件に非難はしないでください。作物が必要な栄養素を過不足無く、きちんと与えるという植物本位の栽培なのですから。


少し、話は戻って定義1はどうでしょう?


実は、これも抜け穴があります。


菜種粕など、一部の肥料の原材料は人による化学的な処理が施されています。
菜種粕は、菜種油を絞った後のカスです。
ところが、油を絞る時に薬品を使います。菜種と薬品が直に接触します。これは人による直接的な化学処理です。


薬品を使わずに菜種油を絞ろうと思ったら、力をかけてぎゅっと絞る物理的な方法しかなく、これでは効率が悪いのです。


確かに、これは、肥料の原材料に対する化学的な処理ですが、肥料を作るための処理ではありません。油を絞るための処理です。
だから、肥料製造行程に関しては化学的な処理が行われていないということで、こうした化学処理された菜種粕そのものや、それを原材料にした肥料は有機肥料として一般的に認められています。
これ、屁理屈っていえばそうなんですが..


もちろん、こういった肥料をどんどん排除して作物を作っていくという考え方もありますが、お客様ときちんとコミュニケーションをして、伝えなければいけないことはきちんとお伝えし、質問にはきちんとお答えできるようにいつも勉強を怠らない農家となれるように私は目指しています。


余談ですが...

一般の方の中には、単に有機肥料を使った栽培が有機栽培であると認識しておられる方がまだいらっしゃいます。
意識の高い肥料店では、一般の方々のこういった誤解を防ぐために、有機肥料とは呼ばずに有機質肥料と呼んでいます。
有機質成分の肥料ですよという意味です。
今回、私は有機肥料と書きましたが、極力、有機質肥料という言葉を使うようにしています。

Ohana Farmの公式サイトもご覧下さい→地産地消を勧める長野市の農家 Ohana Farm公式サイト

テーマ : 農業
ジャンル : 就職・お仕事

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Secre

有機肥料のお話

さすがにお詳しい!

私はお米を作る時に肥料(化学を含む)を使います。
勿論有機肥料も使いますが。

知人や、親類の人が 有機栽培 と言う言葉だけに惑わされ、農薬を一切使わないで有機肥料・堆肥だけで米作りや野菜作りをしました。

結果はさんざんたるもの・・・

なにをどれ位使用したら良いかから始まりますが、ただエイヤァーでやった無謀さも有るのではと思いますが。
これじゃ話にならない、論外で×です。

私の米作りに戻りますが、肥料もバイオの時代です。

先代が化学肥料を便利で有効だから使い始めてから自然、水質への影響や生態系への影響で田に居たドジョウやタニシ等々が見られなくなっていました。

それを責めるつもりは有りません。
かつては農協を初め、それ作れ、増収化だと叫んで来ましたから。

ここ数年、私の田ではドジョウやタニシ等かなり増えて来ました。

土地に合った肥料と後は微生物の力を借りています。

しかし出来る事なら有機農法に近づいて行きたいと願っています。

有機栽培

有機栽培は難しいと思いますよ、実にデリケートな栽培だと思います。
肥料だけでなく、ありとあらゆる事に神経を行き届かせる必要があると痛感しています。
培土一つとっても、吟味しないと。

最近、有機と言うと肥料や農薬などいわばテクニカルな面が強調されているのには、大変憂慮しています。
本当は包括的な概念だと私は思うのですが....結局、有機栽培も「有機」というブランド化に飲み込まれていきつつあるのかなと、感じると大変寂しいです。
プロフィール

農園管理人

Author:農園管理人
こんにちは、Ohana Farm (オハナ ファーム)です。

Ohana Farmは長野市にある家族だけで営んでいる農家です。野菜、お米、リンゴ、洋梨を栽培しています。
モットーは、地産地消。
このブログはOhana Farmが地元のお客様に向けて情報を発信していくブログです。

連絡先:
Tel 050-3671-4870(固定電話ですので畑に出ている間は出られません)
メールでのご連絡は、下にあるフォームをご利用下さい。

※Ohanaはハワイ語で「家族」を意味します。

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